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2016.10.02(日) 01:15:00
ニューヨークに行った話(一昨年の回想)
書こう書こうとは思っていたものの手つかずのままほぼ二年経った。
いや、それどころか、前回更新は2011年、5年前である。
その間にシンガポール香港台北ジャカルタ上海とミクさんの海外公演を観るために出かけたのであるから、ずいぶんである。
ミクさんが一人歩きして海外の各地で人気を伸ばし、実際にコンサートをやってみればチケットが完売となるほどお客さんが来てくれて盛り上がってくれる。
その状況が面白くて、現地のファンの反応を直に見たいとの思いから方々に行ったわけだが、自分が行ったという事実に自分でびっくりするというもの。
ミクさんに手を取られて、近くて遠いという感覚が強かったアジアを巡るような旅が出来たのは良い体験だったと思う。
2014年某月某日、knoさん達がLAからNYへアメリカ横断を試みるという話(後のUltraMikuである)を聞きつけたので、違う事でネタでも作れないかしらと考えていたところに、
「ミクさんテレビ出演」というニュースが飛び込んで来た。それも観客を入れたスタジオでの収録であるという。
いやいやしかし、いきなりNYに行ってその日の収録のテレビ番組をスタジオで観覧するなんて事は、話を聞いただけでも無理そうだって思うじゃん?
もともとは、“Late Show With David Letterman” の放送を観るには何時にLAに着いていればいいんだろう?ということでプランを考えていた。
この番組が生放送ではなく収録する形式なのは、時差のために地域毎に異なっているプライムタイムに合わせて放送出来るようにするためで、アメリカではよく有る方式らしい。
なので、LAの放送はNYでの放送より実際には3時間遅くなる。だったらばNYで放送を見た方がいいんじゃないだろうかと考えるのが自然。
そこから、ちょっと余裕を見たフライトプランを組むと収録そのものにも間に合う時間にNYに着くことになってしまう。
FXさんが、上のように述べているけども、飛行機も宿もいつもぎりぎりになってから確保しているので、
この時点ではなんの予約もしていなかったりする。
宿といえば今回初挑戦の新しい試みがあった。それは Airbnb といういわゆる民泊サービスを利用してみること。
Airbnb の存在は gull さんから聞いていて、ちょっと試してみたいと思っていたのだ。
NY はホテル代も高いし、同じ値段を払うのなら Airbnb では選び放題と言ってもいい。
利用した経験から言うと Airbnb 利用のポイントはどのリスティングを選ぶかという選定作業にある。まぁ当然なのだけど。
これは使ったことのない人(使おうと思っていない人)には想像のつかないくらいの手間がかかる作業だと個人的には思う。
サイトに掲載されている写真などを参考に宿泊先の候補を選ぶのだが、ホストが宿泊者向けに用意している説明書きが特に重要な判断要素となる。
どんな書き方をしているか、どんな事を気にかけていて宿泊者に対しても注意して欲しいと思っているのか、
どこまで詳しく伝えることが相手に対しての親切と思っているのか、ホストの性格がそのまま出ているので
ウマが合いそうな人の所を選ぶのが絶対にいい。
今回NYの宿に選らんだホストの人は、それはもう長文の説明を書き下していて、
たとえば「退去する日には玄関のカギをドアノブの所にかけておいて欲しい」(ドアはオートロック)というようなことまで書いていた。
そんな長文を最後まで読む利用者もほとんどいないだろうなと思われる程度なのだけども、
初めての利用者としてはそれくらいの丁寧さが丁度良いと思ったのと、
チェックアウトの時間も早朝になってしまう事が分かっていたのでそれが問題にならないという判断材料を出してくれていた事を評価した。
※この文章も長くなるがどれくらい最後まで読んでもらえれるだろうか。
Airbnb のシステムでは Airbnb ユーザーなら誰でも宿泊OKで、一発予約可と設定されている物件もあるが、
多くのリスティングについては、いったん宿泊者からホストにメッセージを送って承認を乞う仕組みになっている。
もちろん旅の目的や簡単な自己紹介をしたためてホストが判断しやすいようにする事が推奨されている。
また逆に宿泊者が気になる点をホストに問い合わせる事も出来る。
旅の目的、それには、テレビのチャンネルにCBSが入っているか、これが最重要事項なのだよ(笑)
普通ならテレビが有ってCBSが入らないというのは考えづらい事だが、
念には念を入れて問い合わせてみたところ、CBS映るよ番組を見るのもウェルカムだよ、との事だったので決定した。
ところで、Airbnb の利用に当たって参考にしたガイドは特にない。
自分で Airbnb のようなシステムを組むとしたらどんな点に配慮するべきだろうかとか
自分がホスト側でゲストを受け入れるとしたらどんな事が気がかりになるだろうかという事に考えを巡らせて、参考にした。
番組の収録を観覧するための申し込み方法については番組のホームページに書いてあった。
一つは希望者に抽選で折り返しかかってくる電話でのクイズに答えること。
クイズの内容は番組の出演者にまつわるもので、視聴者には簡単な類いの問題だという。
もう一つは当日の午前中に電話して、キャンセル待ちの予約をとること。
当然当日に電話する方にかけるしかない。そのためには現地に着いてすぐ使用出来るSIMを手配する必要があったが、
これは簡単だった。 ReadySIM(現ZIPSIM) の直販で注文したところ、なんと3日で届いた。
10月8日、ANAのフライトが定刻より30分ほど早く着いてくれて運が良かった。入国審査も空いていてすぐ終わる。
SIMも数分で有効化が完了。しかし一つまずい事に気がついた。電話受付の番号を控えてきていないじゃん。
データ通信は使えているので検索して調べ直す事も出来るはずだが、こういう時は他力本願。
nogさんに訊けば即座に答えが返ってくる。
受付開始時間になる前に一度かけてみる。「ただいまの時間は受付を行っていません」という旨の音声案内、番号に間違いはないようだ。
そして、11時、ぜんぜん繋がらない。
受付が終わってもう一度音声案内を聞くことになるまでは粘ってみるしかないか、とリダイアルを繰り返す事おそらく50回ほど。15分ほどで人間の相手が出てびっくりした。
受付自体はとても簡単でほぼ氏名を伝えるだけ。後で身分証明が必要になる事などの説明があったかな?
受付係「お連れ様はいらっしゃいますか?」
自分「いません、一人です。」
受付係「パーフェクト」
みたいな調子で何がパーフェクトか分からないが整理番号12番を確保出来た事を知らされた。
どうしたことか、スタジオで観覧できる可能性が出てきてしまったのか!?
なお、この時点でまだJFK空港を出ていない。
Airbnb のホスト、ジョン(仮名) の家はイーストヴィレッジ。
Airbnb アプリのメッセージ機能で、今から行ってもいいかと訊くと「部屋の準備はまだだけど荷物を置くぶんにはいいよ」との返事。
4階建てのアパート(と呼ぶのか?)の最上階で、屋上に休憩スペースを設けていたりする。
アパートは各階が1軒で、エレベーターはない。何となく「こういう所、NYで暮らすなら住むかもしれない感じだな」と思った。
ジョンは意外にも自分と同じくらいの背丈で、注意深そうな性格という印象を受けた。ホストとしてなれた様子で意図的に話しやすい雰囲気を出してくれている感じがした。
Airbnb のホストをやりつつ自分の家を改良していくことを半分趣味としているのか、着いたその日の昼も水道屋さんとキッチンの改修に励んでいる様子だった。
「どこに行くんだって?地図を出してあげるよ」みたいな事を言うので電話受付で教えられた集合地点「Broadway 53rd」を伝えるとgoogleマップを検索してくれて「あれ?おかしいよね? それBroadway AND 53rdだね。」と、エドサリバンシアターの地図を印刷してくれた。つまりは収録会場前の交差点に来いという事だったのね。
「実はドレスコードがあってビジネスカジュアルって言うんだけど、この格好で大丈夫かな?」と訊いてみると「それじゃただのカジュアルっていうか。ちょっと待って。」となにやらシャツとジャケットとスラックスと靴まで出してくる。「こんな事いつもはしないんだけど、丁度サイズも合いそうだし貸してやるからこれ着てくといいよ。」と一式貸してくれたのだった。なんて事だ。断る理由はないよ。
指定された集合時間まで少し時間があったので M&M's World に立ち寄って teal 色のチョコレートを購入。
ここでちょっと: 今日覚えたい英単語
teal blue
集合場所の交差点の角に “Late Show Stand By Meet Here” と書かれた看板が立っている。番組名を掲げた大きな看板が、エドサリバンシアターの正面にも設置されている。「そういう事になっていたんだね」とちょっと新鮮な感覚を味わった。
時間前なので集まっている人はまだ5,6人だったかな。シアターの前には(クイズに答えて)事前にチケットを入手した人たちの列が出来ている。見るとそんなにしっかりした身なりでない人も割といる。まぁそんなものだろうとはだいたい予想していた。
ミクさんのツインテールを模したような(垂れ下がった二本の角がある)帽子をかぶっている明白なミク廃も居たので
「クイズに答えたんだって?どんな問題なの?」と訊くと「『誰々にお似合いのアイテムといえば何?』っていう問題で『サングラス』って答えたんだ」と教えてくれた。
※誰々の部分は聞き取れなかった。
とりあえず看板の所で整理番号順
に待つ。
予定時刻になってしばらくすると、行列整理係のリーダーがやって来て「いまからチケットを配るけど、全員分あるとは限らないからそのつもりでね。」と言う。整理番号は12番だったが来ていない人がいるらしく自分の位置は前から10番目くらいだったと思う。「これは結構可能性が高そうな?」と思ったがまだ分からない。どういう仕組みか知らないが数分に一回数枚ずつだけチケットが運ばれてきて順に配られていく。ついに待機列の先頭。そして、なんと、自分の分のチケットが手元に。ほんとになんだか驚いたのだけど、外国からキャンセル待ちの待機列にわざわざやって来てチケットが手に入っちゃうことなんてあるんだなぁと。
なにもかもうまくいきすぎた。
列整理のリーダーは、実力主義なアメリカを代表するような人物で、端から見ていても楽しそうにするなぁと感じさせる態度で仕事をしているのが印象的だった。入場前の観客に対して彼が事前説明をするのだけど、「僕らはチケットを手に入れた!楽しむ準備は出来ているな?みんな一緒に、そう Yes!」みたいな調子でテーマパークか何かのようなテンションなので観客のノリも自然に良くなるというもの。
事前説明を受けたら、いよいよ入場。右ブロック中央よりの悪くない位置に案内された。
最初に言っておくけれど、収録してから放送する形式であっても生放送の感覚を大事にしているらしく、放送でカットされている部分はほとんど無かったはず。スタジオのセットを転換する作業の時間がカットされているだけだと思われる。もう一つ、芸能関係も音楽関連も蘊蓄とか何も持ち合わせていないのでそういう知識の披露は期待しないでいてもらいたい。
番組プロデューサーと思しき人が前説をし、収録開始でレターマン登場。
最初のゲストはジーナ・ロドリゲス。出演ドラマの話をしていたな。
ゲストの合間スタジオがセットの転換をしている間に事前に編集された最新の話題的なビデオが流れる。
「青色LEDの発明者がノーベル賞を受賞。赤色と緑色の発明者はおうちで爪噛んでてね。」と余計な一言を足す系のやつである(苦笑) たしかf○ckとかの単語を使っていた気がする。
二番目のゲストはアンダーソン・クーパー。CNNの看板番組「アンダーソン・クーパー360°」のアンカーマン。
「テレビでしか見ないはずの人物がその場にいるわぁ」と思った、さすがにね。
デイビット・レターマンは、アンダーソン・クーパーと彼の母親にまつわるエピソードについて話した後は、ほとんどエボラウイルスの話題に時間を使っていた。
場面転換のビデオは「英国女王が使うセックスの婉曲表現はなんでしょう?ランキング」(また苦笑) 10位からカウントダウン。「1位は“Riding the tube.”」はいはい。 ※注 tube はロンドンの地下鉄の愛称。
ビデオが終わっても今度はしばらく時間があく。ディラッドスクリーンは上の方に初めから吊してあるのかと思っていたが、そうではなく、台車で運び込んで来てその場で吊し上げ作業をしている。作業は意外に早く10分くらいで終わったかと思う。バンドもスタンバイする。
再びレターマンが登場して「さて次のゲストは、日本生まれのコンピューター生成ボーカロイドスターです」「NYとLAでExpoをするために来たそうですね」「皆さん彼女のネットワークTVデビューを温かくお迎え下さい、ハ ツ ネ・ミク」ここはちょっと「あっ」と思ったところで、デイビッド・レターマンのハツネミクの発音が非常に丁寧だった。かなり練習して挑んでいるよねこれ、と。
ディラッドボードのミクさんは、人間の目にはいつも通りの色に見えていて、「あれ?いつもよりブーツがつやつやかな?」くらいに思ったけれど、
観客席用のモニターテレビに映っている収録映像を見るとかなり青みがかってしまっていて、「このまま放送されたらあんまり良くないなぁ」ということがずっと気になっていた。
他に考えた事は、バンドメンバーの方々のこと。北米でエキスポをやるからバックバンドをお願いしますと依頼を受けた後に追加でテレビ出演もお願いしますと言われているはずで、
それがレターマンの老舗番組とは、「そんなことが起こるってだれが想像する?」という気分じゃないのかなぁ、とね。
そのためか逆に変な力が入らず精一杯やれるだけをやろうという演奏に聞こえた。気がする。
“Sharing the world” 、正直なところミクさんの英語歌唱は何度聞いてもとても英語には聞こえなくて、「所々英単語に聞こえるかも?」という感じ。※最近のV4Xでは多少マシになっているけどね
ミクさん自身はそんなこと気にもとめずにやっぱりいつも通り精一杯に歌っていた。
終わった後のレターマンの言葉は「ちょっとウィリー・ネルソンのバスに乗ってた気分だね」
退場時に話しかけた親子づれのお父さんと娘さんは、娘さんもボカロファンだけれど、お父さんの方もずいぶんと嵌まっている様子だった。「ミクさんの歌、聴衆にどんな風に思われたのかな?」と聞くと「私は、皆に感動を与えるものだったと思うよ」と大真面目に答えてくれた。
お父さん「最後のウィリー・ネルソンのとこ意味分かったかい?」「ああ、分かんなかった」「あれはマリファナ吸って幻覚でも見たみたいだって冗句だよ」とかも教えてくれた。
さらに「シアターの裏手に行くと出演者に会えることもあるよ」というので一緒に行ってみると、ジーナ・ロドリゲスが居て車椅子のファンとの記念撮影に応じたりしているので「おお、NYすげ〜」となった。ミクエクスポバンドの方も出ていらしたので「日本から来たんですよ」というくらいの事だけを話したと思う。
ジョンの所に戻って、借りた服を返す。「ゴハン食べた?」「いや、服を汚したくなかったからまだなにも。」「そう。ところで相談なんだけど、クリーニング代は実費を請求してもいいよね」「もちろん」でも確か10ドルも払わなかった気がする。いい人だ。
ゴハンについては、建物の玄関を出てすぐ角にあるバーガー屋さんでバッファロー肉のハンバーガーを食べた。
そして夜寝る前に放送を見せてもらった。色は青みがかったままで残念に思ったが、ミクさん本当にアメリカで全国放送の番組に出演しちゃった。この娘はどこまで行ってしまうのだろう?
長い1日だった。
2011年七月の日記/メモ